転職の目標として年収アップを目指す人は多いですが、あまりに現実離れした希望は応募企業にも、エージェントにもマイナスの印象を与えかねません。この記事では、厚生労働省の最新データと転職サイトdodaのデータを元に年齢や業界・職種による年収の違いを解説します。あなたの現在の年収の相場観と転職時の希望年収、さらにキャリアの方向性に役立つ情報になっています。
読むにあたり、注意点があります。厚生労働省と転職サイトdodaのデータは大きくちがいます。
たとえば、全年代の年収をくらべてみます。
【厚生労働省】
全年代・平均年収:全体:311万円 男性:342万円 女性:258万円
【doda】
全年代・平均年収:全体:403万円 男性:449万円 女性:347万円
これらの違いには次の理由ようなが考えられます。
1)厚生労働省の調査は「一般労働者」を対象にしており、短時間しか働かない人を除いた、常時雇用の非正規雇用者を含めていること。一方、dodaのデータは正社員だけを対象にしています。
2)転職を考えている人は意識が高い⇒年収が高い傾向がある
著者が転職エージェントの経験からも感じたことですが、転職活動を始められる人は(現収入が高いか低いかにかかわらず)高い意識と行動力を持っています。他の人がくつろいだり遊んだりしている時に、将来のために努力できるのだから年収が高い人が多いのでしょう。
ですから、この記事を読んでくださっている人は、自信を持ってください。あなたは確実に上位数パーセントの人です。
厚生省のデータが日本の労働市場の全体像を、dodaのデータは転職やキャリアアップに積極的な人たちを表していると言えると思います。比較すると、より転職の参考になると思うので、どちらも載せます。
グリーンの背景:厚生労働省(令和4年賃金構造基本統計調査)
ブルーの背景:doda(2021年9月~2022年8月doda登録の約56万人のデータ)
都道府県別の賃金と支出のデータは「【2023年最新版】地方転職/U・Iターンおすすめエージェント 口コミ解説あり」の冒頭で解説しています。
この記事では、厚生労働省データでは「賃金」、dodaデータでは「年収」としています。それぞれ元データに合わせているのですが、念のためにちがいを説明します。
賃金:諸手当以外に会社から支給される全てのもの。年収より幅広い意味。(従業員視点の用語)
年収:=給与。基本給に残業代などの諸手当のみ。(雇用者視点の用語)
【厚生労働省】男女別賃金の推移 (1976~2022年)
【厚生労働省】男女・年齢別賃金
男女別賃金カーブ:
男性:年齢階級が高くなるにつれて賃金も高く、50代後半がピークで416千円(20代前半の約1.9倍)
女性:50代後半がピークで 280千円(20代前半の約1.3倍)上昇の山が低いのが特徴。
次から学歴や産業による年齢別の賃金を見ていきます。あなた自身が今どこにいるのか、これからも上がる傾向にあるのか確認してください。
【厚生労働省】学歴・男女・年齢別賃金
男女計:高校 :273千円、専門学校: 294千円、高専・短大 :292千円、大学: 362千円、大学院 :464千円
男性:高校 :297千円、大学 :392千円、大学院: 478千円
女性:高校: 222千円、大学 :294千円、大学院: 404千円
男女ともに、年齢が上がるにつれ、学歴による賃金差が大きくなる。特に女性の場合大学院とその他で大きく変わっています。
【厚生労働省】主な産業・男女・年齢別賃金
男女計:
1位「電気・ガス・熱供給・水道業」(402千円)
2位「学術研究,専門・技術サービス業」(385千円)
最下位:「宿泊業,飲食サービス業」(257千円)
1位と最下位で約1.6倍の差が開いています。
【厚生労働省】雇用形態・男女・年齢別賃金
男女ともに正規・非正規で賃金のピークが異なっています。
男性:正規雇用:50代後半 非正規雇用:60代前半
女性:正規雇用:50代後半 非正規雇用:40代前半
賃金のピークが男性では正規雇用の方が早くなり、女性では非正規雇用の方が早くなっている。また女性の方が賃金のピーク時期の差が約15年と大きくなっています。
【doda】年代別の平均年収
ここからは、2021年9月~2022年8月にdodaに登録した約56万人のデータになります。このデータは正社員のみを対象としているため、全体的な収入水準が高くなっています。
次に、年代別のデータに基づいた解説をしますが、すべての年齢層において、年収が300~400万円未満が最も多い層となっています。また、年齢が上昇するにつれて、収入の差が拡大していく傾向が見られます。そのため、20代や30代の転職しやすい時期に選択した職種や業界が、生涯年収を決定することが理解できると思います。
【doda】20代の年収分布
400万円未満が全体の約72%と大きく占めています。差が小さいのが20代の特徴です。
【doda】20代職業別・業界別 平均年収
職種:1位:専門職と最下位:事務・アシスタント系の差は約1.6倍です。
業界:1位:金融と最下位:小売・外食との差は約1.2倍です。
上の「20代の年収分布」で見たように、20代では差が小さいのが特徴です。ですから、20代の転職では「どこも同じ」に見えてしまいがちですが、将来の伸びしろがあるかどうか、よく検討してください。
【doda】30代の年収分布
20代に比べ、600万円以上の「ハイエンド」が増えてきます。1000万円以上も20代の0.2%から1.2%になりました。
逆に300万円未満が20代の32.4%から約半分の15.5%になっています。2番目に占める年収も300万円未満から400~600万円未満となっています。
【doda】30代職業別・業界別 平均年収
職種:1位:専門職と最下位:事務・アシスタント系の差は約1.8倍です。
業界:1位:金融と最下位:小売・外食との差は約1.4倍です。
20代に比べて年収の伸びがある職種・業界と伸びが小さいところの差がついてきました。
職種:1位:専門職:20代:475万円⇒30代:640万円 約1.4倍
最下位:事務・アシスタント系:20代:304万円⇒30代:350万円 約1.2倍
業界:1位:金融:20代:374万円⇒30代:519万円 約1.3倍
最下位:小売・外食:20代:306万円⇒30代:381万円 約1.2倍
【doda】40代の年収分布
30代と比べ500~600万円未満が0.1%の上昇とほぼ変化がありません。この500~600万円未満を中心にこれより年収が少ない層が数パーセントずつ減り、これより年収が多い層が数パーセントずつ増えています。1000万円以上が800~900、900~1000万円未満より多いのも特徴です。
【doda】40代職業別・業界別 平均年収
職種:1位:専門職と最下位:事務・アシスタント系の差は約1.9倍です。
業界:1位:金融と最下位:小売・外食との差は約1.4倍です。
20代に比べて職種による差が開いてきました。
職種:1位:専門職:20代:475万円⇒40代:698万円 約1.5倍
最下位:事務・アシスタント系:20代:304万円⇒40代:366万円 約1.4倍
業界:1位:IT/通信:20代:366万円⇒40代:603万円 約1.6倍
最下位:小売・外食:20代:306万円⇒40代:437万円 約1.2倍
20代で4位、30代で2位だったIT/通信が1位になりました。IT/通信業界は人材不足で給与の伸びが大きいのが一因でしょう。
【doda】50代の年収分布
50代を含めすべての年齢層で、300~400万円未満の層が最も多い年収になっています。その一方で、50代では1000万円以上がその下の600~700万円未満、700~800万円未満、800~900万円未満、900~1000万円未満の4つの層を超えて、4番めに多い12.0%となっています。
【doda】50代職業別・業界別 平均年収
職種:1位:企画・管理系と最下位:事務・アシスタント系の差は約1.9倍です。
業界:1位:総合商社と最下位:サービスとの差は約1.9倍です。
50代では職種で企画・管理系が1位になりました。年齢的に管理職になる人が多いことがわかります。業界は1位、最下位ともに変動していますが9位:小売/外食と最下位:サービスの差は2万円だけです。職種・業界ともに2倍ちかい差が開きました。
職種:1位:企画・管理系:20代:393万円⇒50代:794万円 約2.0倍
最下位:事務・アシスタント系:20代:304万円⇒40代:411万円 約1.4倍
業界:1位:総合商社:20代:357万円⇒50代:960万円 約2.7倍
最下位:サービス:20代:317万円⇒50代:437万円 約1.7倍
20代で5位、30代・40代で3位だった総合商社が1位になりました。総合商社の20代から50代までの伸び率が大きいことが寄与しています。
まとめ
職種・業界により年齢が上がる従い、年収が大きく変わることが理解されたと思います。若い頃はそれほど大きな差がないので、40代50代での働き方や年収まで考える必要を感じないかもしれません。ですが、年齢が上がるにつれて、転職が難しくなるとともに、収入差も開いていくことも意識してください。若いときに選んだ業界・職種があなたの生涯年収を決めることになります。
ただし、これらはあくまでも他人のデータです。一番大切なのはあなた自身の転職軸とライフスタイルです。
あなたの希望を実現するために、これらのデータを参考にしながら、転職エージェントと具体的な目標を決めていきましょう。
今は人材不足で年収アップできる転職が増えています。ですが、この状況がいつまで続くかわかりません。
ぜひ、早めに転職活動を始めてこの年収アップのチャンスを活かして、あなたのキャリアを切り拓いてください。
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